〈足からだって影響するのです〉

 

 

影響するのは、手だけではありません。

足からだって思わぬ影響があるのです。リフレクソロジーや足ツボマッサージなどで行う“足の裏を押す”という施術。

指の施術や、首や肩を散々揉みほぐすよりは影響は少ないですが、やり方によっては、しっかり体を悪くする事が出来るのです。

 この指導を、気功教室で、生徒同士で実験形式に行った時の事です。

 まず初めに、畳(体が沈まない平らな所)に仰向けでねかせます。

その人の足の裏を、指で押して行きます。足ツボのように、声を出してしまうほど強く押したり、ゴリゴリしなくてもいいです。本人が痛気持ち良い強さで構いません。

 押されている人も、足の裏を気持ち良いと思える強さで押してもらっているのですから、体にはとっても良さそうに感じて押されています。

 しかし! 先生が「首、辛くない? 詰まってくる感じしない?」と、押されている人に質問しました。

「そう言われましたら、首が詰まってくる感じがします」

 この時押されている生徒は、体がとても悪い人ではなかったので、先生に言われるまで気付きませんでしたが、完全に首に問題がある人には、数回押しただけで、明らかに本人が自覚できるほど、首が詰まった感覚が出てきました。

 足の裏を押せば、必ず首が詰まる訳ではありません。押す方向や押される人の体の状態で、首以外にも腰や背中、股関節や膝などにも影響が出てきます。

 その理由を少し種明かしをしますと、足の裏を押す事で、頭の方向に押した“力”が発生します。

 その力は、体の中を伝達していき、伝達出来なくなった所でぶつかり、溜まっていきます。そう、原理はご存じの方も居るかと思います“力学的エネルギー保存の法則”です。

 もう少し説明しますね。動力のある機械で考えると、動力を伝達していく部品というのが必ずあります。その部品が動力を伝達出来ず、全ての動力の力を受け止めてしまっていると考えてみて下さい。なんとなくでも“壊れてしまう”事は、想像出来ると思います。

 その、力を受け止めてしまっている部品が、その人の体の状態や押す角度によって変わり、首や腰、背中や膝などさまざまに影響が出るのです。

 この発想は、私の知るかぎり、どのリフレクソロジーや足ツボ、指圧の本や教材でも、目にした事はありません。と、いうことは、皆それを知らずに施術しているという事でもあります。

 これは、とても恐ろしい事だと私は思うのです。どのくらいの効果が期待できるのかはっきりしていない足の反射点やツボで効果を出そうとして、力学的エネルギーという物理的な視点から見ると、逆に体を悪化させているかもしれないという可能性を考えさせられた体験でした。

 

 では、同じ人に、先生が足の裏を押したらどうなるでしょう。

 首も腰も詰まってくる感じがしないどころか、足の裏を押しているだけなのに、背骨や首が伸びてくる!

 何故でしょう? 

これが技術です、テクニックです、技量の差です。