〈どうすればいいのかはクライアントの体に聞け番外編〉
今だからこんなお題をお話したり説明したり出来ますが、つい数年前まではそんな事が出来る知識も技術もなければ余裕もありませんでした。
正直なところ、先生に「体に聞け」なんて言われても、「体を見れなら分かるけど体に聞けだなんて、いったい何のことだろう?」ってなもんです。
この話をよく先生から言われていた頃は、前項目でも少しお話に出てきましたが、“マニュアルでは解決出来ない壁”に、思いっきりぶち当たっている頃でして、いったいどうすれば良いのか分からず、テンパっている時代です。
そんな時に、これまた訳の分からない事を言われてしまうんですから、さらにテンパって余裕まったく無しの毎日でした。
そんなある日の事です。
激しい肩こりの症状を抱えるクライアント。仕事がデスクワークという事もあり、手や腕がこの症状に対して密接な関係がある事までは何となく分かったのですが、それをどうすれば良いのかが分かりません。
いろいろやってはみますが、殆ど効果的な変化をさせられないでも、気持ちは良かったのか、そのクライアントは眠ってしまいました。
眠っているクライアントの横で、完全にテンパる私。もう次に打つ手が思い付かず、困り果てている私の頭に浮かぶのは、先生が「クライアントの体に聞け」と言っている姿。
そんな時、もう藁をも掴む思いで聞いてしまったのです。眠っているクライアントにバレないように小さな声で、クライアントの手に向って「どうしてほしいの??」と。
私だって分かってますよ、そういう意味の言葉ではない事を。こんな事を寝ている人の手に聞いたってどうにもならない事くらい。でもその時は、その位切羽詰まっていたんです。
そしたらどうでしょう。私の切羽詰まった感が手に伝わってくれたのか、手が少し動きだしたのです。勿論クライアントは眠ったままです。
「も・もしかして!」私はもう一度手に聞いてみました。手の動きは段々大きくなり、まるで「ここを………こっちに……」と言っている様な動きを始めたのです。
こうなったらもう手に従うしかありません。言われた方向に動かし、変化があった所でもう一度「今度は?」と聞きました。
手はその後も動いてくれ、その通りに施術を進めていくと、今度は身体に効果的な変化が出てきたのです。
自分で聞いといて何なんですが、あの時はものすごく驚きました。「先生が体に聞けって言っていたのはこの事だったのか!」と、勘違いしそうになるくらい。
味を占めた私は、その後もこのクライアントが眠ってしまった時は、「どうしてほしいの?」と、手に直接聞いていました。
手は毎度動いて教えてくれていたのですが、ちょっとやり過ぎてしまったのか、段々クライアントが起きている時も動くようになってきてしまったのです。
少し「ヤバイかな?」とも思ったのですが、その事をあまり問題視しない優しいクライアントは、「あらら、手が勝手に動くわ」程度でスルーしてくれました。
クライアントが怖がったり気持ち悪がったりしない事を良いことに、そのまま何度もそういった施術をしていると、今度は要求通りにしてくれるのがうらやましかったのか、他の胴体や足まで本人の意志とは関係なく動くようになってきたのです。
そんな事になっても、怒るどころか喜んでくれている優しいクライアントさん。最終的には、整体に来なくても、寝ている時などに体が勝手に調整してくれるようになりました。
他の何人かの方にも、この方法を試しましたが、動いたのはこの方を含めて3名だけでした。でも、試したのは精々20名に満たない人数ですから、そう考えると結構な確率で動くのかもしれませんね。
かといって、この方法は正統派なシモザワ整体の技術ではないので、今は全く使っていませんし、試してもいません。
まぁ、体にはまだまだ不思議な事や謎が沢山あるうちの一つの例といいますか、何で動くのかは、やっていた私にも全く分からないところでして。
一応この事は、下澤先生にもお話しました。そしたら先生 「あぁ、動くだろうね」って。
先生分かるの!!
でも、その理由を少し教えてはくれましたが、言葉だけでは全てを理解出来ない事も分かっています。
私がこの事を、本当の意味で分かるようになる日は来るのでしょうか…。いや、分かるようになる為、日々努力します!