〈どうすれば歪みが正しい状態に戻るかは見た目じゃ解らない〉

 

 「骨(関節)がズレている」「骨(関節)が潰れている」「体が曲がっている」等と、言われた事がある人は、ものすごく沢山いると思います。

 

病院ではレントゲン写真の確認で、整体やマッサージでは見ただけ・触っただけで言われてしまう事も。人によっては、誰に言われることも無く、自分で見たり触ったりして気付く方もいらっしゃいますね。

このような“体の歪”は、骨格に形となって出て来ますので、大きな歪みであれば、特別な訓練をしなくても簡単に見てわかる方は大勢います。

 

ところが、この歪みを元に戻すとなると、一気に難易度は上がり、そう簡単にはいきません。

右に曲がっているからと、左に一生懸命曲げても、元に戻ることはそうありません。

 

 私もそうだったのですが、下澤先生から教わるようになるまでは、「出ている所を押す」だったり「縮んでいる方を伸ばす」だったり、「捻じれている反対の方向に捻る」だったり。要は、身体の見た目の歪の形に対して、元の位置に戻る方向に操作するという発想しかありませんでした。

 

 ですがこの方法では、思ったような良い結果は得られません。うまく効果を出せる時もあるのですが、時にはとても時間がかかったり、効果を出せたと思っても、すぐ歪んだ状態に戻ったり、まったく効果を出せない時もあるのです。

 

 ところが、下澤先生の施術を見ていると、どんなクライアントにも、どんな歪みでも、必ず驚くほどの変化量で、歪みを元にもどしていくのです。

 

 けれども、見た目の歪みの形に対して、反対に操作する発想しか無い私にとって、先生が何を何の目的で施術をしているのかは、全く解りません。

不思議なもので、この発想しかない時の私は、施術中の先生に「何をしているのか」「何が目的なのか」を質問し、先生に説明しながら施術を進めてもらっても、全く理解が出来ないのです。まさしくチンプンカンプン。メモを取ろうが、写真を取ろうが、何度先生の施術を見ようが、理解出来ない事に変わりはありませんでした。

 

先生が施術でしているような事をマネしても、先生のような結果は当然得られず、先生から「それは俺の技の形をマネしているだけで、俺の技とは全然違う。それでは逆効果になる事もあるから止めなさい。」と、お叱りを受けた事もありました。

 

実際に自分の身体で、曲がっている膝を、曲がりの反対の方に動かし元に戻るか試してみましたが、元に戻る事はなく、痛みはなかった膝に逆に痛みが出てしまう結果になりました。

 

どうしてこのような結果になってしまうのでしょうか。

これは、一見単純に見える歪みでも、実は複数の歪みが折り重なるようになっており、複雑な仕組みでその形状を作っているからなのです。

曲がっていても、それは大小の異なる方向の歪みの中で、身体を安定させる為にその形になっており、「歪みを戻す為の正しい方向」は、その歪みを全身から見て解読して初めて分かるのです。

 

ですから、歪みを戻す為の正しい方向は、曲がっている方向にさらに曲げるという場合もあり、「曲がっている逆に曲げてみたら戻るどころか痛くなった」という事が起きたりするのです。

 

これを理解し実践出来るようになるまでは、かなりの年月がかかりましたが、実践出来るようになってからは、飛躍的に解決出来る体の問題の範囲が広がったと思います。

勿論忘れてはならないのは、単に理論の理解だけではなく、問題となる歪みの分析力やそれを察知する手の感覚も、かなり磨きをかけなければなりませんが。