〈バキバキしないのには理由があるのです〉

 

 最近は、“バキバキしない”“ソフトタッチの施術”の整体院も増えてきましたが、ほんの一昔前までは、そんな整体院はほとんどありませんでした。

 痛みがある所の筋肉をひたすらもみほぐし、ある程度したら一思いに“バキッ”と矯正術をする所ばかり。

 

 シモザワ整体では、“バキッ”とする矯正術はほとんど用いませんが、“バキッ”とする事を否定している訳ではありません。

 

 私も、整体を習い始めた頃は、この方法から下澤先生に教わり練習したものです。

 矯正術には矯正術の利点と効果があり、私達でもその方法がベストであると判断する場合は、矯正術を行う事もあります。

 

 では、何故ほとんど行わないのか。

 

 それは矯正術を行わない方がベスト、と判断する事例があまりにも多いことと、矯正術をしなくても、関節や筋肉を元の位置にすることが出来る、シモザワ整体独自の技術を持っているからです。

 ただ単に「バキバキされるのを怖がる人が多いから」と、ソフトタッチだけで施術を行うのとはワケが違います。

 

 

まず、矯正術にはリスクが伴います。

体験した事が無い人でも、他人が矯正術を受けている所を見た時に「怖い」と感じると思います。

実際に練習時も含め、施術中の事故の最も多いのが矯正術です。

施術中の事故に対応している賠償保険会社でも「矯正術での事故は対象外」という所もあるほどです。

私が利用者の方などから聞いた話だけでも、本人や家族や友達が事故にあい、病院には行ったが治療院にはそのことを言っていないという事例が多数あるので、保険会社や治療院が把握しているよりも、実際には遙かに多く事故件数があると思います。

 

矯正術は、ずれてしまった関節を元の位置に戻す為に行いますが、ずれてしまうのは骨や関節だけの問題ではありません。

 

その部分の筋肉を十分に揉んだとしても、“それ以上にずれないように硬くなっている”場合だと、矯正術をしてもすぐ前の状態に戻ってしまいます。場合によっては、硬くなり守っている所を揉むことは、体にとっては「攻撃」されていることにもなりますから、症状が悪化することもあるのです。

たとえば「分離症は整体やマッサージを受けると悪化する」と、世間に言われてしまうのは、そのためだと思います。

 

矯正術を行っても問題が無い状態なのか否かの判断を誤ると、とんでもない事故を引き起こす事になるのです。

 

「矯正術で事故を起こすのは下手だから」と、言う方もいるかもしれませんが、技術的な問題だけではなく、このようなリスクがある中で、「習ったから矯正術をすれば良くなる」という考えは、シモザワ整体では許されません。

 

 バキバキしないのには、他にも理由があります。

 

 最近の来院される方の身体の多くが、矯正術には不向きになっている傾向があるのです。

 

 ご老人は筋肉も骨も弱くなっていますから、不向きなのは誰でも解ると思いますが、実は若い人でも不向きな方が増えてきています。

 

子供の頃から身体を使った遊びもスポーツもせず、仕事もあまり筋肉を使わないような方が増え、身体を支えるための筋力が不足している方や、弱い力での作業にも耐えられない身体になっている方が問題をおこしている場合などは、矯正術はとても不向きといえます。

 

 体を支えられなくて関節がずれているのですから、その部分は外からの力で簡単に“ずれ動く”状態になってしまっています。

 または、筋力不足により問題を起こし関節がずれてしまうと、その部分はより強力な力で守らなければ、身体を保つ事が出来ません。

 

 強い筋肉の緊張の力で守っている所を無理に動かそうとすると、矯正術をしてもその部分は動かず違う所が動き、そこがずれてしまったり、最悪、強力な緊張を作る事で保っていた身体が、保てなくなり逆に問題を大きくする事にもなり兼ねないのです。

 

 こういった身体に余裕がない方に施術する場合、弱い力で施術を行っても十分に変化していきますが、逆をいえば、それは“弱い力でも悪化する”体なのだということです。

 人によっては、さする程度の力でしか施術出来ない方もいます。

 

そんな状態の方に、一思いに“バキッ”なんて、いくら上手になっても危なすぎてやりたくありません。